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ぶどうワインのTAは、普通、0.55〜0.85。発酵前果汁のTAは、0.65〜0.85。 酒石酸、リンゴ酸は、ぶどう果実に元々含まれているもので、シュウ酸、乳酸、クエン酸、酢酸は、微生物の発酵で生成されたもの。 酒石酸、シュウ酸は微生物に利用されることが少ない安定した酸である。リンゴ酸、クエン酸、乳酸は、微生物に利用されやすい不安定な酸なので、長期保存 用(2年以上の保存を前提とするなど)の場合は、この点に注意して対策を施す。 ぶどうの場合、寒冷地のぶどうは酸を多く含み(すっぱい)、温暖地のぶどうは酸が少ない(甘い)。バランスのとれたワインを造るために、温暖地のワイナ リーでは初期果汁に酒石酸を加え、寒冷地ではMLFを行って酸味を下げることが多い。 |
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普通のぶどうワインは、pH
2.9〜4.2の範囲にある。 数字上は小さな違いだが、pHは対数なので 0.3 くらいの変化が水素イオン濃度で倍くらいの違いに相当する。pHが低い(数字が小さい方)が水素イオン濃度が高い。 科学的安定性 と生物学的安定性は共にpHに敏感であり、pHの低いワインの方が利点が多いため、ぶどうワイン製造者はpH3.0〜3.5に調整することが多い。 低いpHでは、蛋白質を沈殿させるBenoniteの使用量も少量で済む。大量のBenonite使用では、ワインの風味もなくなってしまう可能性が高 い。また、pHが低いほど有効SO2濃度が高くなるため、少ないSO2使用量で済む。 |
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褐変ならびに野生の酵母やバクテリアの活動を
抑える目的もあり、果実をプレスする当初から30〜50mg/LのSO2を入れておく。通常30mg/Lを投
入するが、温まってしまった果実を扱う場合など量を増やすことが多い。投入したSO2の半分はワインの成分と反応する。残り半分は遊離状態でワイン中に存
在し、新たに浸入した酸素と結合してワインの酸化を防止するほか、微生物の生育を抑える役割を果たす。市販のワイン酵母はSO2耐性があるので入れすぎな
い限りあまり問題にならない。SO2は、一次発酵で糖分がエタノールに転換される際に生じるアセトアルデヒドと結びつく形で殆ど無くなってしまうの
で、発酵終了時に50mg/L程度を再び添加し、ボトリングまでの期間を通して30mg/Lを保つようにする。但し、MLFを実施する場合は別の話で、
ML細菌の活性を止めないように濃度調整する必要がある。 ワイン中のSO2には分子形態のものと、亜硫酸塩のものがあり、微生物の生育を抑える目的では分子形態の亜硫酸が0.5〜1.5mg/Lあれば良いとされ る。ワイン製造者の間では0.8mg/Lが目標濃度になっている。ワイン中の亜硫酸の形態の違いは、pHに依存し、低いpHほど分子形態のものが増える。 遊離SO2濃度は簡易測定キットで調べられるが、形態の違いは測定できないので、0.8mg/Lの亜硫酸分子を生成するために必要な亜硫酸濃度を表から換 算す る。 多くの自家製ワインがSO2不足によるアセトアルデヒドの蓄積で失敗しているともいわれる。頻繁にワインを造る人はSO2測定キットを揃えておいた方が良 いだろう。 |
果実 | 有機酸 | 初期TA |
---|---|---|
りんご |
リンゴ酸 | |
杏 |
リンゴ酸 | |
バナナ | リンゴ酸/クエン酸 | |
こけもも | クエン酸 | |
ブラックベリー | リンゴ酸 | |
ブルーベリー |
クエン酸 | |
ボイゼンベリー blackberry とraspberryの交配新種 | リンゴ酸 | |
さくらんぼ | リンゴ酸 | |
渋味の強いさくらんぼ (Choke Cherry) | リンゴ酸 | |
Crabapple | リンゴ酸 | |
クランベリー | クエン酸/リンゴ酸 | |
黒スグリ | クエン酸 | |
赤スグリ | クエン酸 | |
白スグリ | クエン酸 | |
デューベリー 木苺
の一種 |
リンゴ酸 | |
アメリカニワトコ |
クエン酸 | |
いちじく | リンゴ酸 | |
グースベリー (西洋すぐり) | クエン酸 | |
ぶどう |
酒石酸/リンゴ酸 | |
グレープフルーツ | クエン酸 | |
ハックルベリー | クエン酸 | |
キウィ | クエン酸 | |
キンカン | クエン酸 | |
レモン | クエン酸 | |
ライム | クエン酸 | |
ローガンベリー blackberry とraspberryの雑種 | リンゴ酸/クエン酸 | |
Marionberry | リンゴ酸 | |
ネクタリン | リンゴ酸 | |
オレンジ | クエン酸 | |
パッションフルーツ | リンゴ酸 | |
もも | リンゴ酸 | |
洋梨 | リンゴ酸 | |
プラム | リンゴ酸 | |
ラズベリー | クエン酸 | |
ルバーブ | リンゴ酸/シュウ酸 | |
ローズヒップ | リンゴ酸 | |
Salal | クエン酸/リンゴ酸 | |
サモンベリー(木苺の一種) |
リンゴ酸 | |
ザイフリボク | リンゴ酸 | |
苺 | クエン酸 | |
タンジェリン(みかん) | クエン酸 |
果実 |
色/タイプ |
酸度(TA) |
|
仕上り |
仕込み* |
||
ぶ
どう |
白 /ドライ | 0.65-0.75 | 0.70-0.75 |
白/ス イート | 0.70-0.85 | 0.75-0.85 |
|
赤 /ドライ | 0.60-0.70 | 0.65-0.70 |
|
赤/ス イート | 0.65-0.80 | 0.70-0.80 |
|
シェ
リー |
0.50-0.60 | 0.55-0.60 |
|
他
の果実 |
白 |
0.55-0.65 | 0.75-0.85 |
赤 |
0.50-0.60 |
0.70-0.80 |
添加物 | 英名 |
リットル* | Gallon |
効能 |
アシッド
ブレンド |
Acid blend | 1.02g |
3.9g |
増 TA + 0.1% |
クエン酸 |
Citric acid | 0.96g |
3.7g | 増 TA + 0.1% |
リンゴ酸 |
Malic acid | 0.96g |
3.7g | 増 TA + 0.1% |
酒石酸 | Tartaric acid | 1.07g |
4.1g | 増 TA + 0.1% |
フマル酸 | Fumaric acid | 0.39〜1.48g |
1.5〜5.7g | 増
0.05〜0.15% …MLF 阻害が目的 |
水 |
適
量 |
適
量 |
減
TA - 加水割合に応じて |
|
炭酸カル シウム | Chalk/ Calcium carbonate | 0.65g |
2.5g | 減 TA - 0.1% |
重炭酸カ リウム | Potassium
bicarbonate |
0.89g |
3.4g | 減 TA - 0.1% …低温析出が必要 |
重酒石酸
カリウム |
Potassium
bitartrate NF |
0.52〜1.3g |
2〜5g | 低温析出
の前に添加 …結晶の核 |