hop 日本のビール事情 hop

どうして日本には、同じ種類のビールしかないのでしょうか?


日本に住んでいたら気付かないことですが、ビールは地球上のアルコール飲料の中で最も多様性のある飲料です。白く濁ったものから真っ黒なもの、黄金色、赤いもの、酸味のあるもの、度数も1%未満から10数%、フルーツやスパイスの入ったもの・・・例えば本来のビールの幅を「100」としたら日本の大手メーカが発売しているビールはわずか「1」の幅しかありません。

このわずか「1」の、ほとんど均質とも言える幅の中で、日本の多くのかたはキ*ンがいい、いやサッ*ロがいい、とあれこれ議論しています。

米国でも、確かにバドやミラー等の巨大メーカがあり、ここでも日本と同じような質のビールを出しています。最もよく売れているビールです。ただ、米国には中小ブルワリーが無数にあり、多くの種類のビールを好みや状況に応じて愉しむことができます。

日米のビールの幅の狭さ・広さを端的に表している事象があります。
米国では多くの中小ブルワリー(醸造所)が、年末にクリスマスエールあるいはホリデイエールなるレシピを競って発売します。ハーブやスパイスを入れたり、オートミールを入れたり、毎年レシピが変わります。ブルワー(醸造技術者)がその腕を自慢し合っているかのようです。

これに対し、日本の大手メーカは「春*番」「秋*」「冬*語」・・・宣伝費はいっぱい使い、ラベルも変えますか、中身はほとんど同じですね。

大手ビールメーカを非難するつもりはありません。基本的に日本ではビールに対する税率が異常に高いため、均質で効率の良いビールを工業製品として大量に作る以外、企業として利益を得る道が残されていなかったからです。ちょうど日本の家電製品・工業製品と同じように、ほとんどの工程を自動化、同じ物を大量に作ることでコストを抑え、利益を得ています。ただ、この大きな利益のなかから、これまた多くのお金が税金として徴収されます。

膨大な額の税金を納める見返りとして、大手メーカは酒税法により他企業からの参入を防ぐことができ、経営が安定する・・・日本では世界に類をみない巨大企業数社による独占状態が続いていました。

このような巨大企業が作りたいビールとはどんなビールでしょうか?
そしてどんな販売戦略をとれば良いでしょうか?

もちろん種類を増やすことは極端なコストアップに繋がります。ある程度売れるものでなければ酒販店にも置いてもらえません。麦芽の使用量をできるだけおさえ、米やコーンスターチ等を加え、すっきり・さっぱりとした比較的大多数の日本人の好みにあったビール1種類にターゲットを絞る。一方で膨大な宣伝費を使い、ビールとは「炭酸による爽快感が身上、すっきり・さっぱり」したものだよ、という観念を植え付ける・・・

このようにビールにとって厳しい環境の中で、ぜひ注目していただきたいことがあります。細川内閣の規制緩和で誕生した日本の地ビールメーカです。例えば軽井沢のヤッホーブルーイングや千葉のビアライゼ、茨城のネストビール・・・大手の大量生産ビールにはない、幅広い美味しいビールをなんとか日本で広めようと一生懸命頑張っておられます。

ただ、規制が緩和されたといっても酒造免許を取得するための障壁が低くなっただけ、税率は自動化を進めた大量生産の超大手メーカと同じです。諸外国で見られる小規模ブルワリーに対する緩和措置もありません。これでは日本に真のビール文化は根付きません。

最後になりますが、ビアライゼホームページ http://member.nifty.ne.jp/BIER-REISE/
トップページから行ける「青シャチョの地ビール起業奮闘記」をぜひお読みいただきたいと思います。日本にも、こんなにビールに情熱をかけた人がいるのか、と嬉しくなると同時に、どうして日本には「1」の幅のビールしかないのかがよく理解できます。

さらに、全国地ビール醸造者協議会 では、税制を含め、どうしたら日本にビール文化が根付くかを考え活動しておられます。

東京にお越しの際には、両国の「ポパイ」や下北沢の「蔵くら」で、ビールの本来の多様性の一端をぜひ味わっていただきたいと思います。

日本にも将来、本来の素晴らしいビール文化、食文化が根付くことを期待します。
そのために私たちは何をなすべきかを考える時期にきているようです。

アドバンストブルーイング 相澤
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