モルトエキスの保管について |
モルトエキスの保管についての注意点です。
モルトエキスは糖度が非常に高いため、扱いに注意すれば雑菌汚染の可能性はほとんどありません。雑菌の細胞内とウォートの糖度(浸透圧)の差により、エキスに入った雑菌はその細胞内の水分を体外に吸い出され、生存できないためです。水飴やフルーツの砂糖浸けが常温で何年も保存できるのもこの理由からです。
古い未開封の缶入りエキスに雑菌が入って膨らんでいる物がありますが、これは保存環境の悪さにあります。つまり、温度差の激しいところに缶入りエキスをおくと、エキス中の水分が缶内の空洞部に水滴として付着します。この水滴の付近はエキス糖度が薄まるため、カビや雑菌がこの部分に限って繁殖します。
また、エキスを高温で保存すると、メラノイジン色素が変化し、色が濃くなると同時に独特の嫌な癖のある味になります。これは開封未開封を問いません。この「劣化」はホップ無添加よりもホップ添加エキスで顕著に起こります。DIYショップでモルトエキスを購入するときは、できるだけ新しい物、良く売れて回転の速い物を選んでください。特に、高温の倉庫で一夏越したような保存状態の悪いエキスでは嫌な癖のある美味しくないビールしかできません。
具体的には、30℃で90日間保存したエキスはほぼ2倍の色の濃さ、44℃で90日間保存した場合は12倍の濃さになります。(出典:Muntons社品質データ)
日本のあるビール造りの本に、「モルトエキスは古いほど美味しい」との記述があるものがありますが、これには驚きと同時に失望を覚えます。古いエキスを買ってもらうための偽りでしかないと思います。
エキスを数回に分けて使用する場合は、(空気を抜くことができない)「容器」よりも厚手のポリ袋に入れ、空気を全部抜いたうえで、冷蔵庫に保存するのが良い方法です。数ヶ月間は問題なく使うことができます。